ベストコレクション(柴田恭兵)

「けっして歌の上手い人ではないが、彼の誠実な人柄が歌にも表れている。ライヴはMC入り。」

有名な『CDジャーナル』誌による本作のレビューからの一部引用ですが、本作7曲目に収録されている『なんとなく、クリスタル』を聞けば、シバキョウ*1が「決して歌が上手くはないが、人柄が誠実」であることが瞭然となります。

AOR(Adult Oriented Rock)テイスト溢れるオケに、実に不安定なメロディラインが乗っかっていますが、これは作曲した近田春夫氏の意図したものでは恐らくなく、シバキョウの歌手としてのスペック不足に因って引き起こされた現象であると思われます。そんなシバキョウですが、現・長野県知事のペンによるアダルトな歌詞*2を、「なんとなーく、クリッスタァール」と情感たっぷりに歌い上げているところから察するに、引き受けた仕事には全力でぶつかる誠実な人柄の持ち主のようです。


前掲のレビューには「ライヴはMC入り」とありますが、ここもミソです。

10曲目収録の“WATER”は、なんとヘレン・ケラー女史とサリヴァン先生の有名なやり取りを題材にした問題作です。MC(というより曲間の語り)で、オーディエンスに向かって「みんなも知ってる奇跡の人…」と語りかけるシバキョウ。気が付いたら「ウウウウォオオオタァアアアー!!」と絶叫するシバキョウ。その瞬間、シバキョウにはヘレン・ケラー女史以外の霊魂も勢い余って降りてきているに違いないと思わせるほどの入り込みっぷり。さすがは役者です。


自分としては久々に白熱したわけですが、どこまで熱くなったところで、『あぶない刑事』もしくは『はみだし刑事』の皆様ファン以外の方々の心の氷を溶かすことは出来ないのでしょうね。


ベスト・コレクション

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*1:敬愛を込めてこう呼ばせて頂く。

*2:「レイニー・デイはグルーミー」と始まるこの歌詞がまた凄まじい。