すべてに射矢ガール(ロクニシ コージ)

青春映画や青春小説や青春音楽*1といった「青春作品」に大抵共通して含まれている成分が「コンプレックス」だと思います。

幼少期から思春期にかけて自分がコンプレックスに苛まれていたかと思うと、そんなでもなかったような気もするわけですが、最近、「青春作品*2」が琴線に触れることが嫌に多い、ということはすなわち、かつて自分がコンプレックスの塊だったということを意味すると同時に、そんな多感さを失ってしまった今となってそんな頃に憧憬を抱いている、ということの裏返しでもあるのでしょう。


本作『すべてに射矢ガール』に関しては、類似作品としての喩えが乱暴ではありますが『天然コケッコー*3辺りと比較すると、何もかもが劣る気もします。画は上手ではないし、話が冗長だったり無茶があったりするし、キャラクター設定も乱暴だし、ベタなオチが多く、台詞が説明的だったりするし。そこまで貶める必要もないのではないかと我ながら後ずさりしてしまいますが、やけに心に引っかかる台詞や心象風景が珠に登場するのもまた確かなのです。

完成度が高い割にはハシにもボウにもかからん作品と比べると、未だになんとも説明のつかない魅力のある本作の方がよほどマシだと思います。


「説明がつかん魅力」とお茶を濁しておりますが、実は単純に登場人物「あすみちゃん」に恋をしてしまったのでは…ということをふと思い、我ながら背筋がゾっとしたのですが、これって久々に感じるコンプレックスなのかもしれません。


*1:そんなカテゴリーは多分無い。

*2:罷り間違うとラブコメ等も含む。

*3:正真正銘の名作。