上沼恵美子のおしゃべりクッキング/5分10分おかず209品


新番組編成の時期になりました。

CBSドキュメント』終了という大事件に象徴されるように、リーマンショックの余波が及び制作予算が軒並み減らされている中、名物番組も粛清の嵐の対象外ではありません。『タモリ倶楽部』が存続したことはせめてもの救いでありました。更には、この『おしゃべりクッキング』が末永く存続できるのならば、信仰の力を信じても構わない、そんな心境です。


この番組に出会ってかれこれ15年。しばらくご無沙汰した期間もありましたが、最近はこの番組を隈なく録画しておき、週末にまとめて観たりしております(この上なき贅沢な時間)。


辻調理師専門学校、通称「辻調」の先生方は、いつの間にやら新旧交代しておりました。

正に狸爺といった趣の和食担当(ダミ声)は、狸坊主風の先生に*1

セカンドバッグが実に似合いそうな中華担当(髭)は、一見するとジェントルながらも実はヤンキー上がり、といった趣が香り高い若手先生に*2

基本冴えない洋食担当(彼に関しては本当に何も思い出せない)は、押し出しが弱いにも関わらず、ときおり恵美子に立てつく若手先生に*3

どなたも個性溢れる魅力的な先生です。


この番組には古き良きテレビ番組を感じさせてくれる舞台装置が数多く仕込まれております。


まずは「視聴者プレゼント」。

いまどき「パーソンズ」のエプロンがプレゼント対象となっている番組が他にあるでしょうか*4


他にも滋味深いのは「衣装協力」。

これはゲストごとに楽しめます。長谷川初範さんの「ダンヒル」にはこの上なく奥深い滋味が感じられました。


また、番組に招かれる「ゲスト」。

このゲストはトークに付き合うなり、質問を差し挟んだり、といった具合に振る舞ってはいますが、調理に参加するわけでもなく、スツールに大人しく座らされているだけなので、基本的に所在がなさげです*5

必然的に、ゲストの出演によって視聴者が何らかのメリットを得る、ということは少なくなります。要するに単独で暴走する(例:料理の旨さに感嘆する、先生をいじる等)恵美子を観ている方が楽しいのです。

ただ、極々稀にゲストの存在が妙に輝くことがあります。あの場で「曝される」のではなく「輝ける」人が居るのです。


二枚目より三枚目、料理ベタより料理好きが合うと思ったら大間違いです。

例えば、「実は興味を隠しきれない程に料理好き」といった趣を押し出そうとした斉藤暁さんや「二の線と見せかけて三の線という意外性がウケる」と自分で思ってしまっているキライのある高嶋兄*6は共に不快なだけでありました。

最近の当たりは、少年のように背筋を伸ばし身を乗り出して鍋の中身を除く北村一輝さん*7、無難に話を合わせるつもりがどうしても自爆テロになってしまう羽田美智子さん辺りですかね*8


この番組は、ゲストの正味な人間的魅力、芸能人としての底力を残酷的なまでに明白にさらけ出してしまうリトマス試験紙なのかもしれません*9

拷問アワー『徹子の部屋』ほどとは言わないまでも。たとえば勝間和代さん辺りをこの番組のゲストとして見てみたいものです。ひょっとするとひょっとする(彼女のことが好きになれる)かもしれないのですから。


*1:三遊亭行楽風。あらゆる事物に「いわゆる」を付けて喋る癖を視聴者としては楽しんだものだが、最近は本人や周囲が気づき始めたのか、押さえ気味で物足りない。

*2:調理技術面では実力ナンバーワンだと個人的には評価している。

*3:「ブイヨン」の発音が玄人はだし。バルサミコで咽せるなど、素のリアクションが大変に美味しい。

*4:※注4:『新婚さんいらっしゃい!』における「YES/NO枕」と同じ匂いがする。ともに同じくABCテレビの仕事であることは偶然ではないはず。

*5:大抵の場合はバーターで宣伝というミッションを背負っているので構造的に致し方ない。

*6:何故かこの番組は高嶋ファミリーとのつながりが濃い。この番組を観てさえいなければ、高嶋(弟)の嫁の顔なんざ覚えずに済んだはずだ。

*7:この方については「メガシャキ」のCMに辟易とさせられていた関係であまり良い印象を持っていなかったが、この番組のおかげで本当の魅力に気付かされた。興味を持ってWikiでプロフィールを調べてみると、実はガンプラ好き。「少年の頃は海賊になりたかったため商船高専に進学したものの、海賊にはなれないと気づき三年で中退(五年制)」したこと、自分自身について「全てにおいて力加減が下手」と述べていることなどが分かった。また素晴らしい出会いをありがとう、恵美子。

*8:ともに、大括りでは二枚目でも、三枚目のポテンシャルを強く有しているという気もしないではない。

*9:※転載時(2011年7月28日)追記:2011年に入っても、リトマス試験紙は相変わらず大活躍を見せている。可哀想な榎本孝明さんなどは役者としてどれだけの大物なのか知らんが、人としての魅力が大変に薄いことが白日に晒されてしまった。誰が何と言おうが、匙を投げ早々に先生イジリに興じ始めた恵美子がそう感じていたに違いない。それはそうと、羽田美智子さんがまたも降臨された。今回も自らを「典型的な和食党」と称しておきながら「中華大好き」と瞬時に豹変し恵美子を絶句させるなど飛ばしに飛ばしてらした。もうこの番組のゲストは羽田さんと佐々木健介の二人の繰り返しで良い。あ、それと中野裕太