The Boat That Rocked(Richard Curtis)

映画"Anvil"が良いという話がやけに聞こえていたので、早稲田松竹が二本立てで取り上げた機会に久々に映画館に足を運んでみました。

結局は"Anvil"よりも、二本立てのもう一本の方が個人的には好きでした*1


その「もう一本」として上映されていたのが本作。一連のラブコメで名を馳せたWorking Title社*2らしく、ノリは軽く衒いもナシ。物語の舞台である60年代の匂いをプンプンに放っております。


その衒いのなさと来たらかなりのもので有名どころの音楽もじゃんじゃん使われております。その使い方が王道的にせよ*3、変化球的にせよ*4、ともかく着実にツボを刺激するこの映画。そこにイチャモンつける奴は音楽マニアとしての自尊心は保てるかもしれませんが野暮と呼ばれることで代償を払うこととなりましょう。


恥ずかしながらも言ってしまえば「映画全体が良質なMix Tape」といった趣の本作。収録曲のうち少なからぬ部分が自宅のライブラリに含まれているのに、結局はサントラを注文してしまいました*5


中でも印象的だったのはLeonard Cohenの一曲。主人公の失恋に覆い被さる"So Long Marianne"です。

実はもう10年以上も以前から聞いてきた曲ですが、ここ最近ご無沙汰だったので、最初は誰のどの曲だか分かりませんでした。

そういう風に匿名的な状況で(iTunesiPodでランダム再生するのもそう)音楽を聴くと却って楽曲の本来的な魅力がリアルに伝わるものです。


なお、出演者も密かに豪華です*6


相も変わらず最悪の邦題がついていることについてはもう諦めました。

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*1:"Anvil"についての感想は「そこそこ」というところ。ストーリーテリングの丁寧さもあってか観ている最中はそれなりに感情移入できるものの、映画館を出て3歩歩くと「要するにバカを鑑賞してただけ」って事に気づいた。巻き込まれる家族はたまったもんじゃない(言ってしまえば、家族もバカなんだと思うが)。得てして日本人はこういう話を好みがちなのは成功者を妬む感情の裏返しだと思う。

*2:ブリジット・ジョーンズの日記』、『ラブ・アクチュアリー』といった作品名を連呼するだけで雰囲気は伝わるだろうか。

*3:Kinksの"All Day and All of the Night"然り、The Rolling Stones"Let's Spend the Night Together"然り。

*4:エンディングの変化球の落差はかなりのもの。ここについてのネタバレは自粛。

*5:満を持しての2枚組。権利関連のコストを考えると十分過ぎるほどの気合が感じられる。本気で興味がある方はAmazon.co.ukなら中古品が送料込みで1,000円程度で購入できるのでお薦めする。

*6:Bill Nighyは言わずもがなだが、Kenneth Branaghを久々に観て嬉しい気持ちになった。あの面子にPhillip Seymore Hoffmanが入っていることがまた絶妙。Truman Capoteを演じた人間と同一人物とは思えない演技。The 役者。