Calling Out of Context(Arthur Russel)

荒川区立図書館通いが続いております*1


谷中霊園から一気に下るとそこはもう日暮里。いわゆる「谷根千」の枯れつつ上品な空気が一瞬にしてムセ返らんばかりのバタくささに転ずるのですから面白いものです。

相も変わらず麺を手打ちし続ける「馬賊」の髭マッチョにはもう目が慣れましたが、すれ違いざまに「自転車、観ておきます!(から、御入店どうぞ!)」とワタクシに呼びかけた「昼キャバ」の呼び込みのお兄さんのアプローチのアバンギャルドさには胸が熱くなりました。

日暮里、まだまだ何が起こるか分かりません。


「何が起こるか分からない」と言えば、本筋はやはり荒川区立図書館。

必ずしも数量的な充実ではないかもしれませんが、それとなく棚を覗いてみると「いったい誰が借りていくのか・・・」と絶句せざるを得ない逸品が少なからず所蔵されております。

Amazonウィッシュリストに放り込んだまま放置がちになっていた本作を棚で見つけたときも思わず声が漏れました*2


このArthur Russelという御仁のプロフィールは「仏教ポップ」を筆頭に余りに強烈すぎて、文才の無いワタクシがどう書いても陳腐に落ちそうなので、きちんとしたバイオグラフィをご参照頂きたいのですが*3、ともかく重要なのは音であります。

「この時代にこんなことを!」というようなタイムレスさに驚かされるということは一般的にもたまにありますが、そういう意味で本作は驚愕レベルです。これらの曲が80年代に作られたとは俄には信じられません。この手の音楽として洗練されていながらもその後の時代に作られたもののどれよりも無駄がなく味わい深い。この感動をそんな低級な表現でしか形容できないのが非常にもどかしいのですが、静かながら深い感動が得られること請け合いです。


買ってまで聴けとまでは申しません。どうぞ荒川区立日暮里図書館までお出かけください。


Calling Out of Context

Calling Out of Context

*1:経緯は先のエントリの通り。

*2:ともかく「こんな劇物が!」という単純な驚きが強かった。「神楽坂向こう」の名店Mash Recordで「ミッドナイト・ラン」のサウンドトラックを見つけたとき以来の衝撃。思えば最近レコード屋で「棚を睨み続けて数時間」というようなことを全く行っていない。ヘタなレコード屋より公共図書館の方が刺激的だという現実には唸らされる。

*3:この御仁の特性を「ワイルドな矛盾」と評したこの文章は(それはそれで受け売りかもしれないが)秀逸だと思う。