【番外編】プリンス
行きがかり的事情もあって、東京滞在中のアラブの王族の面倒をみるお手伝いをすることになりました。
正確に言うとサウジアラビアの王子。
端から聞くと漫画みたいな話かもしれませんが、現実はさらに漫画みたいなことになっているもので、王子と言っても2,000人くらい居るんだそうです。王子本人から聞いた話なので間違いはないでしょう*1。
イスラム文化の紛うことなき中心であるメッカも擁する保守本流のお国柄。食事に豚なんてもっての他。頑迷なヴェジタリアンでもマルゲリータ食ってりゃなんとかなるんだから、と思って関係者会合の初回に神楽坂のピッツェリアを予約いたしました。
我らがスーパーフリーライターK先生の、視線を完全に空中に泳がせつつのスーパーブロークンイングリッシュ*2も多いに手伝って食事は和やかに終了いたしましたが、ふと気がつくと、しばらく東京に滞在するという王子のアテンドという任務を自分も負わされている事に気づきました。
出産という大仕事から帰還されたばかりのH先輩ならではの詐欺師的テクニックだとも言えますが、この「頼まれれば嫌とは言わない*3スピリット」こそが、最高学舍にて恩師から授けられた最も大切な宝物であるが故に、そこは「笑って何とかする」ことにいたしました*4。
まずは王子が使う携帯電話を手配しよう、と店を出ました。
支払いを済ませようとすると王子が「払う」と言って聞きません。ワタクシの差し出すJCBカードと王子の差し出す万券とに戸惑うお店の方。
「払う」、「いや私が」という応酬はよく見られるものですが、だいたいは多少は目上の方を立ててお支払い頂く形になるのが世の常です。結局、落ち着き払いつつ座った目で
"I insist(ここはなんとしても私に払わせて下さい)"
との一言でトドメを刺されて勝負あり。「目上を立てた」ということになるんでしょうか・・・。
王子、人数が多かったとは言え、君が差し出した万券1枚じゃ足らなくてごめん・・・つーか、君、16歳だったよね・・・orz。
齢30を越えた良い大人たちが雁首そろえて「ごちそうさまでした」と敬礼。舎弟・・・いや、家来って感じか。そりゃGDPも中国に抜かれるはずです。
この王子、最初にきっちり貸しを作るところなんざ、慎ましやかで趣味が渋い*5だけではなく、ビジネスの素養もあるんじゃないでしょうか。
思えば十年以上も前の話ですが、ベトナムのおっさんやおばさんは右も左も分からん日本の旅行者(ワタクシ)をとても親切に扱ってくれたものでした。
身分は何であれ、若くして独りで外国に見聞に出かける好奇心と勇気には敬意を払い精一杯応えるのがコスモポリタンの務め。
ベトナムのおっさんやらおばさんに借りを返すつもりで、東京の面白さをきっちりPRしておこうと思います。