Spinning Top(Graham Coxon)
Graham Coxonさんに急に惹きつけられるようになりました。
そんなに前からの話ではないのですが、それからというもの暇さえあればこの人の音楽を聴いております。
とりわけ"Kiss of Morning"、"Happiness in Magazines"、"Love Travels at Illegal Speeds"の3作に収録されている楽曲は、そのポップな作風もあってか、何故これまで気付かなかったのだろうとすら思わされる逸材ばかり。畏れ多くも自分のバンドで演奏を試みたりもするほどです*1。
実に月並みな表現で情けないのですが、それらのポップさというのは米国インディーズ音楽的な雰囲気が音から濃厚に香っていることと無縁ではないと思います。
その一方で彼の書く歌詞には自嘲的機知に富んだ暗さに満ち満ちており、その英国的な香りはむせ返らんばかりです。
まるでPavementかSebadohかというような曲に乗せて
「社会性・・・自分には十分な難問ですよ」
と自ら歌ったのはバンド(Blur)時代でしたが、その趣はソロになっても相変わらず。
ポップな曲調でありながら、
「生きること。それはとても難しい。(中略)死ぬこと。それはとても難しい」
といった身も蓋も無い歌詞を歌ったり、
「生きること。それはイケてない」
というような身も蓋も無い曲名*2だったり。
Coxonさんの作品には大変に楽しませて頂いております。
そんな二面性が印象的なCoxonさん。他ならぬ御本人が同じようなことを仰っておられるんですから、やっぱりそういう人なんでしょう*3。
さて、この新作"The Spinning Top"は、またも月並みな表現で恐縮ですが、上記3作とは打って変わってPentangleやらBert Janschといったトラッド・フォークの趣が支配的な佳作です。
あのブースターを強烈に効かせた電撃的なギターソロはどこへ行ったのか・・・と、寂しい気分にならないのは、実は彼がこれまでもいつだって一方ではMartinのアコースティックを抱えてDr Pepperを飲みながら*4Nick DrakeやElizabeth Cottenの曲を爪弾き呟いていたからでしょう。
どこまでも二面的なお方です。
僭越ながらワタクシも齢30をハヤ過ぎて、ちょっとやそっとの半端モノではもう何の感動も得ることができないことが自明になってきた昨今、Graham Coxonの作品にやけに惹かれるのは、そんな二面性があるにも関わらず結局のところは他の誰でもなくGraham Coxonであるというような背骨が音にも言葉にもアートワークにも貫かれているからこそだと思います。
Coxonさん、最近はバイク(モーターサイクル)にハマってるそうです。
TriumphやBSA辺りは正に御あつらえ向きなセレクションだと言えましょうが、そこはCoxonさんのこと。どうやらVan VanやBanditといったSuzuki車にも乗っているらしいです*5。
うむ・・・そういう筋は通す人だと思ってましたよ。
彼にとってバイクとは「靴のようなもの」だそうです*6。
で、最後にこうダメを押されて思わず溜飲を下げたわけです。
"They have to be the real thing."
だから、この人のことを信用できるんでしょうね。
- アーティスト: Graham Coxon
- 出版社/メーカー: Transgressive
- 発売日: 2009/05/11
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*1:言っちゃなんだが、歌も演奏も比較的にルーズなもんで「自分達がやってもサマになるんではないか」という下心があってのことだったりもする。
*2:ちなみにサビの歌詞は「生きること。それはイケてない」の後に「最も時間のかかる死に方」と続く。
*3:ファッションについて語るとき、Velvet UndergroundのSterling MorrisonとSmall FacesのSteve Marriott、老大佐と尖がったインディーズ少年、そんな相反する二方向に自分は泳いじゃうんだ、ということを語っていた。
*4:Dr Pepperが好きで娘にPepperと名づけた、ということが実しやかに噂される彼は現在シングルファーザーであるらしい。Pepperちゃんがグレずに育つことを祈るばかりだが、ああいう頼りない親の元で育つ子の方が、得てして真っ直ぐ頑健に育つものなのではないかと思う。この写真など、父親が娘にお絵かきに付き合ってもらっているかのようだ。行く末を見守りたい。
*5:ソースは脚注2と一緒。
*6:移動の手段というニュアンスではなく、お洒落の一環ということだろうと思う。