Freight Train And Other North Carolina Folk Songs and Tunes(Elizabeth Cotten)

音程の定まらない下手な歌に対する堪え性がなくなってきた、というようなことを以前にどこかに書いた気がします。

ただ、それって本当は音程だけの問題ではない、と気付かせてくれたのがこのElizabeth Cottenさんです。


本作、久々にジャケ買いというやつを致しました*1


まずギターの弾き方。右利きのセッティングのまま左利きで弾いています。

紛うことなき「松崎しげるスタイル」*2です。


そしてご本人の佇まい。

妙齢が為せるのか、人種が為せるのか、ギターを抱える(やたらと大きく見える)その姿には、予備知識のない自分にも何とも言えない奥行きが感じられます。


そんなこんなで買って帰って、いよいよ聴いてみると・・・いやはやヴォーカルの調子っぱずれっぷりにズッコケました。

しかしながら、不快になるどころか、気がついたらアルバム1枚をツルっと聴いちゃっているのです。確かに音程は不安定なのですがその心地よさはちょっと只事ではありません。


とりわけ好きになった1曲に、アルバムのタイトルにもなっている"Freight Train"という歌があります。

貨物列車ですね。

"Run so fast〜♪"って、そりゃ、ま、それなりに速いわな、と思いつつも、牧歌的かつ深淵な詩に興味が湧いて調べてみると、なんとCottenさんが12歳の時に書いた曲だとか。ホンマかいな?*3 。1907年ですよ、1907年*4


彼女の経歴で面白いのは、その後15歳で結婚して以来25年間、ギターは殆ど弾いてなかったということです。

更に凄いのは孫が居るような年齢になってから「ギターを弾けることを思い出して」また演奏を始めてどんどん曲を思い出していったということです。

作品が初めて発売されたとき彼女は63歳。その作品が本作です。


・・・とまあ、ともすると安直なエピソードを欠くことのないElizabeth Cottenさんですが、百読は一聴に如かず(なのか?)。

彼女の素晴らしさは聴けば分かりますよ。


Freight Train And Other North Carolina Folk Songs and Tunes

Freight Train And Other North Carolina Folk Songs and Tunes

*1:素晴らしい出会いを実現する「神楽坂向こう」の名店MASH RECORDにて購入。ジャケットだけではなくタイトルにも惹かれた。ノースキャロライナフォーク。なんていい響きだ。

*2:順番的には松崎しげるの弾き方がElizabeth Cottenスタイルなわけだが。

*3:参考資料

*4:冷静に考えると、日露戦争終戦から第一次世界大戦に至るまでの激動の時代を日本が迎えていた時代。そんな頃に作られた曲がうちの居間で日常的に聴かれていると思うと作者でもないのに感慨深い。