音楽と意図ーヒットチャート考現学(ターザン山本!)

スピッツにしろクレイジーケンバンドCKB)にしろ、「巷」の評価は絶対的にポジティブなわけで、どうかすると自分もそういった評価に押し流されがちでした。

ターザン山本氏の慧眼と単刀直入な表現*1によってそのことに気付かされ、溜飲を下げ、恐れ入りました。

まずはそこについて御礼申し上げたい。そして心の奥底で実は感じていた違和感というものを押し殺していたことに関して謝罪します。自分の心に対して。


プロレスという魂の交換に接し続けてきたことにより磨き上げられたターザン先生の審美眼*2。それをもってすれば、たとえ畑違いのエンターテイメントであっても、その本質を見抜き評価することはいとも容易いことなのでしょう。世の様々な芸能・興行という奴はファンダメンタルな部分では地続きなのだということを知らされました。


「クソ真面目にもなっていないし、深刻にもなっていない」。そんな気分の「現代」という時代の「愛想笑いである」とターザン氏が認識する「ヒット曲」。それらと氏とが直接に触れ合った結果として湧き上がる、魂の叫び(をまとめた本著作)の生々しいこと。まるで興奮して語るターザン先生の唾が飛んできそうな生々しさです*3


飛んできそうというか、臭ってきそう。


音楽と意図―ヒットチャート考現学!

音楽と意図―ヒットチャート考現学!

*1:CKBは「ズバリ、音楽じゃねぇ!!!」から始まって「よく言えばサロン的、悪く言えば『はしっこ』的な心地よさ」と評し、編集者に対して「お前はそうやって、隅っこの快感にハマっていればいいんだよ!だからって俺を勧誘するなよ!!っていうか俺の前にもうCKBを出すなぁぁぁ!!!!」と抵抗。スピッツに至っては「最悪だ!!ショッパイ、どショッパイ、無限大にショッパイよぉ!!!」といきなり炎上。「今という時代に妥協している」と持論を打つのだが、こともあろうに編集者によって「(以下略)」とカットされている。別に彼に主ねるわけではないが、考えてみると確かにスピッツはショッパイ。プロレス用語とはかくも真理を効率的に切り取る事ができる。

*2:京成上野駅周辺で屯しているフリーキースタイルのオッサン達に埋没するといとも簡単に行方不明になりそうな氏だが、考えてもみれば元はと言えば雑誌編集長だったわけで、こう言っちゃ非常に何だが、その語り口はけっこう論理的で分かり易い。

*3:わかり易い例を挙げるが、ターザン先生はエゴ・ラッピンというバンドの「くちばしにシェリー」という曲を聴いて、0.1秒で「ウ、ムッキー!!!」と絶叫し、「グ、グェ〜★※??・・・」と漏らし、「俺は出し抜かれちまったんだよ。(涙)」と臍を噛む。ちなみに、お気づきの通り「!」だらけの本文だが、本作には題名にも著者名にも「!」が付いている。