Modern Times(Bob Dylan)

これまでに読んだ数少ない小説の中で一番心に残っているものが実は『こころ』だったりするのですが、「夏目漱石が好き」と公言するのは随分と憚られます。

彼の文豪の深遠たる偉大さを理解しているだなんて思っちゃいませんよ・・・と勝手に尻込みしているのです。


Bob Dylanが好き」ということを、永らく放言できなかった、ということの原因もそれとニュアンスはかなり似ていると思います。

夏目漱石の新作って話はさすがに無いわけですが、Dylan御大についてはまだ現役なわけで、失礼な話、亡くなられて手の届かないレベルまでに神格化される前に現役作品を耳にする機会が残っていて良かったな、とここ数年よく思います。それと言うのも最近リリースされる作品が普通に良いからです。特に本作はここ数作の佳作乱発傾向にトドメを指すのではないかと思われるほどの傑作でありました。


御大、昔の歌を昔のまんま演奏しないことで有名です。その結果として、一体全体何を喋っているのやらさっぱり分からん、という副効果もあったりしたわけですが、何故か本作は、聴いていてもう、すらすら頭に入ってきます。

ひょっとして御大「歌ってることが伝わんなきゃ意味ないや」って気付いちゃったのでしょうか。それとも加齢とともにスローダウンしたのでしょうか。ま、どっちでもいいですけどね。


あのお歳で


「君と居ると1,000倍幸せ〜」


とか歌われると、


「おじいちゃん、お昼はもう食べましたよ」


とでも返したくなるものですが、呆け老人だろうがBob Dylan印が付いていようがなかろうが一切問題ないほどに素晴らしい作品です。


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