All That You Can't Leave Behind(U2)

前作[http://d.hatena.ne.jp/Baka_in_Black/20060221/1287658709:title="POP"]がけっこう叩かれて、ライブステージの演出コンセプトも行くところまで行ってしまった感のあった当時のU2

"Passengers"という別名義で実験作気取った作品をリリースしてみたものの「いまひとつ感」は拭えず、本作に関してはリリース前から「原点回帰」というキーワードが漏れ聞こえておりました。


ま、この業界、その種の御託は頻繁に聞かれるもの。さして信憑性も無いので、斜に構えておりましたが、蓋を開けてみると、本当に「原点回帰」という御託通りの名作に仕上がっておりました。レコード屋でちょいと試聴したが最後、涙が止まらなくなったような作品は本作以外にはRed Hot Chili Peppersの"Californication"ぐらいしか記憶にありません。


まずもって1曲目"Beautiful Day"。滑らかとも強引とも言えそうなコード進行で緩々と助走してサビで爆発。The Edgeさんが聞かせるオッサンのものとは思えないほどに美しいバック・コーラスに気を取られていたら、今度はThe EdgeさんのギターからDelay効果の効いたアルペジオともなんとも言えない「あのフレーズ」が畳み掛ける。これを「原点回帰」と言わずして何と言えば良いのだ。のっけから反則。

U2の皆さんらしくも青臭くアウンサン・スー・チー女史に捧げられた"Walk on"。この曲のサウンドなども「原点回帰」の雰囲気を強く感じさせますが、それだけで終わらないのが彼らの凄いところで、2曲目"Stuck in a Moment You Can’t Get Out of"や"Kite"に代表されるような佳曲*1で見せ付けられるオッサンたちの包容力は、本作が単なる原点回帰で終わっていないことの証左でもありましょう。TKO勝ち。

振り返れば"Achtung Baby"で"Joshua Tree"の残影を払拭した彼らは、"Achtung Baby"の残影を本作で払拭したのだと思います。

後はけっこう好き放題にやれそうですね。


All That You Can't Leave Behind

All That You Can't Leave Behind

*1:Blue Eyed Soulという言葉があるが、これらの曲こそがそう呼ばれるべき曲だと思う。