Original Soundtrack 1(Passengers)

「映画のないサウンドトラック」

という、よくよく考えると騙されているようなコンセプトで制作された(というような記憶がある)本作。

基本的にはU2の皆さんの作品ですが、実質的な首謀者はU2の技術部門を一手に掌握しているThe EdgeさんとBrian Enoさんのお二方でありましょう*1。あの目立ちたがり屋のBonoさんの影すら、心なしか薄いとすら思えます。


全体的に音楽としてどうかと言えば、可も不可もヘッタクレも無いといった趣です。然らば、何ゆえここで敢えて皆様にご紹介をするのかと申さば、それは、U2のドラムス担当Larry Mullen Jr.さんのスピリットを讃えたいからです。


「作っててドコが良いのかわからなかったし、出来上がった今だってドコが良いのかよく分からん」


本作に関するMullen Jr.さんの発言です。実直なMullen Jr.さん、終いにゃ、こうまでも発言なさっておられます。


「面白い音楽(interesting music)と自己陶酔(self indulgence)て紙一重なんだけど、Passengersのアルバムに関しちゃ、俺ら、そこの際どいラインを越えちゃったんだわ(「自己陶酔」側に)」


U2程のビッグバンドのメンバーともなるとコレだけの奔放な発言が許される、ということなのでしょうか。私の所感は否です。むしろ逆。これだけ自分に正直な人間が太鼓を叩いているバンドだからこそU2はあれだけ巨大になっても自己を律することができるのでしょう。

本作は、U2のテイストを期待して買ってしまうであろうキッズ達をガッカリさせてはいけない、ということでU2名義で発表されなかったそうですが、んなこた、先ずもってMullen Jr.兄さんが許諾しなかったでしょう。


パッセンジャーズ ― オリジナル・サウンドトラック 1

パッセンジャーズ ― オリジナル・サウンドトラック 1

*1:他にも有名オペラ歌手Luciano Pavarottiが参画。「金曜日の妻達へ」シリーズで主題歌として使われた『恋におちて』を歌った小林明子さんも何故かこのアルバムで歌声を披露している。私に「何故か」などと言われる筋合いも無いでだろうが、脈略が無さ過ぎる。