Unforgettable Fire(U2)
"Pride (in the name of love)"や"Bad"といった中期U2の名曲が収録された名作です。特に"Bad"は個人的にツボに嵌る曲でして、ライブ演奏を聴いたりした日にゃ、感涙落ち零れることもしばしばです。
ところで、アイルランドの古城で本作を録音中のU2組一同の風景を捉えたドキュメンタリー映像があります。その内容が私の脳裏に残したインパクトは余りにも強大で、今もって拭い去ることが出来ません。
U2がBrian EnoとDaniel Lanoisというプロデュース・チームと初顔合わせを果たしたのが本作ですが、ドキュメンタリー映像の一コマに、手にはスライドバー、足ではエフェクトペダルを駆使しながらギターを鳴らすThe Edgeさんと、そのThe Edgeさんの膝元にしゃがみ込んでギターのツマミを右に左に廻して音を変化させているBrian Enoさんの二人の様子を観ることができます。一見すると(と言うより本当のところ)至って真面目に創作活動に取り組んでおられるので、見過ごしそうになりますが、よくよく考えてみると実に奇怪な画面(えづら)になってます。ちょいとお二方!ギターって一人で弾くものですよ!
この変態2名が暴走した結果"Passengers"という名義での風変わりな作品がリリースされることになるという後の経緯を考えると、今となってはむしろ大いに頷かざるを得ない実に象徴的なシーンでございました。
ドキュメンタリー映像からもう一コマ。
ミーティング中に退屈そうなBonoさんがそこらの紙切れに書いてカメラに見せた少女のイラスト。こいつには度肝を抜かれました。
喩えるならば、かなりレベルの低い同人誌に思い入れだけで投稿している男子中学生の描く少女マンガ風のイラストのような趣。偏見はびこる現代のことですから、書く人が書く人だったら、それだけで異常性欲犯罪者扱いされてもおかしくないブツ。
このドキュメント映像は比較的有名なもののはずなので、このシーンのインパクトに誰も口を開かないのは、緘口令でも敷かれているのか、と思わざるを得ません。なんて奔放な時代だったのでしょう*1 。
思えば、各種才能に恵まれているBonoさん。いまでは絵本すら出版してしまうご活躍ぶりですが、生まれてくるタイミングにも恵まれていたのかもしれませんね。あのシーンから察するに、これが昨今の話だったら、危険人物としてさっさと世に潰されているような気がしてなりません。
- アーティスト: U2
- 出版社/メーカー: Polygram Records
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*1:裏を返せば、現代があまりに多くの足枷を嵌められているだけかもしれないが。