増殖(Yellow Magic Orchestra)
ジングルに乗せて、やおらグルグルと流れ出す希代の名曲"Nice Age"に注目。
まずは歌詞。
Chris Mosdell氏によるものですが、"Her toys are broken boys"という歌い出しや「彼女は妙齢」と繰り返すサビの得も言われぬ質感は、テクノサウンドのSF感云々を遥か超えて、もはやタイムレスだと思います。
そして歌唱。
かつて紅茶のLiptonだかのTVコマーシャルで
「(曲が)できない、できない〜」
と駄々を捏ねていた高橋幸宏さん。わざとらしい演出だということは百も承知にしろ、その姿を観かけるたびに軽くムカッときたものですが、この曲での歌唱はブリリアント。カラオケでこの曲を歌うと痛いほど思い知ることになります。この曲は彼のモノだということを。
そして演奏。
YMOについては、電子的なビートや効果音が殊更に取り上げられがちではありますが*1、YMOはテクノユニットでも何でもなく血の通いまくったバンドだと思います。メンバーの演奏以外にも大村憲司氏のギターの魅力に始めて気付かされたのはこの曲でした。そのフレーズったら、滅茶苦茶に切れ味が鋭い上に、一発一発の威力が鉈のように重いように感じられます。
YMOは日本が世界に誇る輸出品であるはずなのですが、その反面、日本人の生活に溶け込んでいるとは思えません。むしろ逆輸入品のような趣さえ漂う現実は少々寂しく感じます。
権利の関係が整理されていないのか何なのか、編集盤・企画盤の類がやたらと出ているのも彼らの特徴ですが、小難しいこと、細かいことに拘らなければ、ともかくはベスト盤の中からどれを選んでも問題はない気がしますし、本作をお選びになればもれなくコントも収録されております。
大多数の人が最初に抱く"Rydeen"に代表される先入観が薄れた頃に聴き直すと、もう唖然とするぐらいにカッコイイです。内心「YMOなんてダサい」もしくは「YMOなんて小難しい」と思っている方々にこそお試し頂きたいと思います。
あ、ちなみに、この"Nice Age"という曲中の「ニュース速報」はサディスティックミカバンドのミカさん*2が音読してるんだそうで…知りませんでした。
しかもその内容は、日本入国時に大麻で拘留されたSir Paulのことだそうで。「22番」って拘置所の中でのSir Paulの番号だったそうですよ…凄い話だなぁ。
「彼は花のように姿を現します」
って、そこまでサイケにしなくても…と思ったら、その後リリースされたSir Paulのシングル"Coming up"の歌詞に引っ掛けたものだったそうで。また、ご冗談が過ぎる。
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