Jackie Robinson Tribute: Stealing Home

吾妻光良というオッサンとそのバンド"The Swinging Boppers"と彼らの音楽の魅力については、以前に"Sqeezin' & Blowin'"という作品を題材にレビューを書きましたが、現在日本で随一のライブバンドではないかと思われる彼らがただいまレコーディング中であるとの情報を先日耳にしました。

つい最近、Portisheadの新譜情報に真も偽もなく飛びついてしまい、一人狂喜乱舞した挙句、昨今流行の「ガセネタ」だった、というトラウマになりそうな事態が勃発したばかりでして、半端なニュースソースでは眉毛を1ミリも動かすつもりはないのですが、今回ばかりは吾妻氏本人がステージで喋っていた事なので本当のことでしょう。

ただ、それらの音源がいつリリースされるかについては、果たして確固たる答えは用意されておりませんでした。彼らのレパートリーは「新曲」と言えども、実のところは「新しい替え歌」であることが多く、中には真面目にリリースが危ぶまれるものもあるのです。


そんな中の1曲の元ネタが、この「ホーム・スティール」という粋な野球用語が冠されたコンピレーション作品収録の"Did You See Jackie Robinson Hit That Ball?"です。演奏はCount Basie楽団ですね。Jackie Robinsonとはかの有名な史上初の黒人メジャーリーガー。要するに、


ジャッキー・ロビンソンのバッティング、見た?」


って歌です(まんまですが)。

この曲に吾妻氏のリリックが乗っかると果たしてどうなったのか・・・その名も


栃東の取り組み見たか?』


という曲が出来上がりました*1


彼らの歌は、或る意味で生モノであると言えます。

"Cottage for Sale"という名の原曲にちょいと手を加えて不動産業界を皮肉った『物件に出物なし』という歌も、先日のライブではさらに改編が加えられ、『物件に偽装アリ』*2という歌になっておりました。

時代を先取りしたつもりで作ったという『ITブギ』に至っては努力の甲斐なく既に時代に追い越されてしまっています。自民党から衆院選に出馬したようなIT長者が逮捕までされてしまった今になって「なにやら儲かるらしいぞ…IT!」ってのもねぇ…。


何はともあれ『栃東の取り組み見たか』が仮に録音されたとしても、私も含めたリスナー達の手元に無事に届くか否かは、一重に大相撲協会大関ご本人、そして他ならぬ横綱朝青龍関の度量にかかっております*3

ここは一つ、朝青龍関には横綱としての度量を見せて頂きたい。いや、協会はいざ知らず、大横綱朝青龍関なら黙ってOKをくれるに違いない、と信じております。


Jackie Robinson Tribute: Stealing Home

Jackie Robinson Tribute: Stealing Home

*1:ライブでは既に欠かせないレパートリーとして存在感を発揮している。

*2:以下ネタばれアリ要注意………新しく挿入された「小嶋さん何か隠してる♪姉歯さんホントはハゲてる♪」という歌詞は、超弩級にベタなネタであるにも関わらずライブ会場を爆笑の渦に叩き込んでいた。

*3:別記エッセイ「栃東の取り組みが如何に素晴らしいか」:大関栃東が如何に素晴らしい力士かについては、それこそ吾妻光良&The Swinging Boppersのライブに足を運んで『栃東の取組見たか』をお聴き頂きたい。当時は関脇だった朝青龍関自身も「あんなに張って負けたら失礼」と後にもらしたほどの張り手の連発。噴出する鼻血。そこを耐えに耐えた栃東の上手出し投げが決まるまでをこの上なくヴィヴィッドに描いた歌なのだから。特に曲間の「座布団を投げないでください!」とのMCは堪らないものがある。 かく言う私も、出張先から帰る全日空のジャンボジェットが離陸する直前に機内で観た昨年の大阪場所での朝青龍栃東の大一番には真っ白になるまでに心を燃焼させられた。 最初の一番。朝青龍に攻め込まれながらも土俵際で栃東が投げを打つ。二人が縺れ合い倒れ込んだ結果、同体とみなされ取り直し。機内の乗客たちはこの時点で概ね席に着きつつあったが、一部は息を飲み、一部は歓声を上げ、ほぼ全員が固唾を飲んで取り直し後の一番を待っていた。 フライトスケジュールからすると、どう考えてもあの画面上には「安全上のご注意」が流れる時間になっていた。が、あそこで大相撲中継を打ち切っていたら機内には一瞬のうちに不穏な空気が立ちこめたことだろう。ましてや、取り直し後の一番があんな大一番になった、ということを後であの乗客たちが知ったとしたら…ANAのコールセンターには苦情が殺到したかもしれない。ANAの客室乗務員の英断を讃えたい。 ともかくもう一番。普段は正直言って鬱陶しい仕切り直しの儀も最初の一番が残した深い余韻と次なる大勝負へ高まる期待の中であっという間に過ぎ去り再び両雄の体がぶつかり合う時が来た。 左に差して突進する栃東。体勢を崩しつつ土俵際まで勝負を諦めない朝青龍。結局、栃東朝青龍を激しく寄り倒しつつも諸共に土俵の下に吹っ飛んでいった。 その瞬間の機内の雰囲気。再度感嘆の声を漏らす乗客、思わず手を叩く乗客(ワタクシもここに含まれる)、とりあえずビールを注文したくなる乗客(ここにもワタクシは含まれる)。あのとき乗客の中の誰かがもし座布団を投げていたら、乗客たちは緊張の糸は一斉に音を立てて切れ、皆が座布団を、いや毛布でもイヤホンでも何でも投げたのではないか。そして、機長から「危険ですので座布団を投げないでください」とのアナウンスが入るのだ。いやはや皆さんホントは相撲が好きなのではないか。 実は、先だって観にいった吾妻光良&The Swinging Boppersのライブの翌日にも、この栃東という名力士は、こともあろうに歌の内容どおりに上手出し投げで朝青龍を破り、角番での優勝を決めた。この力士には人の期待を裏切らない何かを感じざるを得ない。…とか書いてたら、今日はあっさり負けていた。安美錦に。うーむ…そんな栃東が好き、とは言わないでおこうではないか。がんばれ栃東