Journeyman(Eric Clapton)

私が中学生だった当時放映されていたホンダのTVコマーシャルでは、バブル時代の残り香がぷんぷん匂うその名も"Bad Love"というEric Claptonの曲が流れていました。

迂闊にもこの曲に感じ入ってしまった私は、馴れないレコード屋を訪れ、間が持たない中で持てる知識を総動員して、数あるClaptonの作品の中から必死で選び分けた"Cream of Eric Clapton"という中途半端なベスト盤を買いました。

実のところ、その頃の私はベスト盤が何たるかも知りませんでしたし、Creamがなんたるかも知りませんでした。その実、お目当ての曲の名前が"Bad Love"であることも知らなかったのですから、知識を総動員したというよりは、第6感に全神経を集中させていたと言った方が当たっているかもしれません。

結局、当時の私の第6感は充分に発達していなかったようで"Bad Love"はそのアルバムに収録されてませんでした。実のところは、この商品には「Hondaプレリュード・コマーシャルの○○を収録!」みたいなコピーが添付してあり、そのことが購入に踏み切った最大の理由だったのですが、その○○とは"Bad Love"ではなく"Crossroad"でした*1


ともかくお目当ての"Bad Love"が聴けなかった中学生の私は、稀代の名演"Crossroad"を向こうに廻して、心底落胆しました。

時は流れて、ついに本作"Journey Man"に収録されている"Bad Love"を聴く機会を得たときに私は高校生になっていました。既にディスクユニオンレコファンといった都会の中古盤屋に足繁く通うようになっていた私は、確か700円ぐらいでこのアルバムを買ってきたと思います。そしてツラツラと聞いてみました。

1曲目の"Pretending"を聞いた瞬間に感じた違和感が徐々に膨れ上がる中、3曲目で私は遂にあの"Bad Love"との再会を果たし、全篇を聴き通しました。


うむ。不快なまでにダサい。


憧れに憧れたあの曲が変わってしまったわけではなく、中学生の頃の自分が変ってしまっていたのでした。


Claptonの残してきたキャリアの中でCreamと"Unplugged"とがある意味突出していることは否定しがたいと個人的にも思います。

しかしながら、今となって本作を聞き返してみて思います。このダサさが実に味わい深い、と。

この"Bad Love"のギターソロで「プヒプヒ」と音を立てるギターを聴け、と。

もはや演歌・歌謡に近いものすら感じますが、それらの世界とClaptonとの接点にそっと佇む人物は、Claptonフォロワーとして有名な柳ジョージ辺りでしょう。

毒気も脂も抜けて好々爺然とさえしている最近のClaptonの作品よりは、一貫してヘロヘロもしくはギトギトだった頃のClaptonの作品をこれからしばらくはDIGしたいと考えています。


*1:"Bad Love"はプレリュードのCMで流れていたとばかり思い込んでいたが(いまもそう思ってる)アコードあたりだったのかもしれない。