Led Zeppelin DVD(Led Zeppelin)

全盛期をとうに過ぎてオバタリアン*1みたいな風貌に成り下がった現在のJimmy Page御大。

痛快なことに(=タチが悪いことに)、彼には「倫理」や「謙遜」の類の気持ちは存在しないらしく、西新宿の海賊盤街を訪れては「俺と写真を撮らせてやる」または「俺のサインをやる」ということとのバーターで(つまりは一銭も払わずに)オメガネにかなった商品をゴッソリと持っていってしまう、という逸話を聞いたことがあります。行動様式からすると「実写版ジャイアン」と称しても差し支えないでしょう。要するに恐喝ですね*2

挙句の果てには、「ギター下手」とか言われちゃって、もう「やりたい放題」+「やられたい放題」なPage御大ですが、若かりし頃のステージ上での立ち居振る舞いたるや、腰下にぶら下げたLes Paulをスリコギのように振り回しながら次から次へと繰り出すそのギターリフは独創的かつ圧倒的で、その点に関してはやはり敬意を払わざるを得ません。あれで「下手」なら「上手」になれずとも結構でありましょう。


「そもそもLed Zeppelinというバンドは『あの4人がそろったことが奇跡』であるバンドで、Jimmy Pageを殊更に取り上げても語るに落ちてしまうのは明白」・・・云々などと渋谷陽一さん辺りに説教されたくないので(されることもないでしょうが)、あとは黙って本作2枚組DVDを鑑賞して頂いて、思う存分その史上稀に見る濃さを満喫して頂きましょう。下世話な挿話など無力であることには異論はございません。

ただしDisk1〜2と続けて観ようと試みることは、いわば小岩井農場辺りで生産された特濃ミルクをガロン単位で一気飲みするような暴挙に近いので、よほどの好き者でない限り、まして胃腸に自信のない方は小分けに摂取することをお勧めします。


敢えてハイライトを1点に絞りましょう。Disk2収録の"The Ocean"でのPage御大に注目。下半身ではChuck Berryの応用編のような内股ステップを刻みつつ、Bonzoのシンバルに合わせて喩えようのない動き*3を連発。「ギタリストは音ではなく立ち居である」ことを持論とする私にとっては肝心なツボを一転集中でグイグイと指圧されるような恍惚を覚える瞬間です。


同じくDisk2に収録されているKnebworthでの演奏はさまざまな意味でコントロヴァーシャルです。Zeppelin解散間際(つまりはBonzo死去間際)の1979年という時代背景も手伝ってか、メンバーの装ちが例外なくハラスメントの域に達する水準でダサく、その点で価値判断を惑わされがちです。ましてPage御大はオバタリアンへの変態を遂げる過渡期にあるためか、小澤征璽がギターを弾いているような錯覚にふと陥りかねない奇怪な雰囲気を湛えております。

しかしながら、肝心な音に要注意。"Achilles Last Stand"が良い例ですが、問答無用のスペクタクル状態となっています。裏ハイライトはKnebworthです。


*1:こんな言葉もあった。

*2:あくまでも噂話だが、西新宿のレコード屋ビデオ屋をハシゴすると、Page御大のポラロイド写真、サインetcに遭遇する確率が非常に高いのは事実。或るソースに拠るとPage御大が来店時に目をつける商品は実のところも稀少且つ高額なものであることが多いらしく、被害を恐れる店舗側には専用連絡網が敷かれているらしい。その連絡網を用いて他の店舗からPage来店(襲来)情報が寄せられると高額な商品を片っ端から隠してしまう、という伝説を漏れ聞いたことがある。Zeppelinの"No Quarter(容赦ナシ)"という名曲を聴く度に、ジャイアンどころか台風並みの存在となっている御大の余生に思いを馳せずには居られない。

*3:強いて言えば「背後に立つ」というタブーを犯した人間に対してデューク東郷がカマすチョップに近い。