Out Of The Body(The Hooters)
Detroitという都市はアメリカ自動車産業が栄華を極めていた時代にMotor Townとして隆盛を誇ったことで有名です。そのまんまもじって命名されたMotownという名門レコード会社の発祥の地であったりします。その後の自動車産業の没落もあり、街ぐるみで素寒貧状態に転落したDetroitは、Iggy先生率いるStoogesのような不良が跋扈跳躍する街となり、一部の不良が嗜むテクノミュージックの文脈でもオリジンとなったとの言い伝えがあります。
一方で、臨海工業地帯の建設によって東西に結びついた太平洋ベルトの一画を為し、勢い余っての公害病も手伝ってかインダストリアルで殺伐とした雰囲気を湛え、Switch Troutやガソリンを始めとした多くのガレージバンドを排出した街が日本は三重県の四日市です。この街を「日本のDetroit」とする話がよく聞かれます。他にも北九州・小倉辺りは似た文脈から実にキナ臭い。
その手の話としては、大都市New Yorkのベッドタウンとして存在しているその様子が似ているということで、New Jerseyを「アメリカの埼玉(千葉説もあり)」と喩える話も聞き覚えがあったもので、徒然なるままに「アメリカの〜」で適当な地名を入れてパラパラと探ってみました(こういう馬鹿げたこと調べるのが何よりも好きです)。
そうすると出てくるわ出てくるわ。Pennsylvaniaは神奈川、Houstonは福岡、San Diegoは横浜、North Dakotaは千葉、Chicagoは大阪だと、皆さんそれぞれに持論を打ってらっしゃる。ここでもし気分を害されたり、一瞬でも本気でムカッとしたり、こいつはバカかと思われた方が居られたらテイクイットイージー。こういうバカ話って、只の一度もアメリカに行ったことがないからこそ無責任に面白おかしく聞けるところがあるのです。
そんな異邦人にとって、逆に街としてのイメージが今ひとつ明確にならなくてモドカシイ街ってあるもんです。
たとえばPhiladelphia。
名前自体はギリシャ語っぽいですね。「Delphiの神託」とかのイメージからすると。北東部の街だけに歴史は古いはずですよね。でも、 Philadelphiaのイメージといえば、Phillies(野球チーム)とクリームチーズとBruce Springsteenの歌("Street of Philadelphia"だったか)ぐらいしかないのです。正直な話。
昨今の流行から考えるとPhiladelphiaと言えばやはりPhilly Soul。L.A.に拠点を移したMotownが衰退していく中で、この街のミュージシャン達が急激に勢力を拡大したという逸話はとりわけ最近よく聞きます。要するにフィリーソウルと言えば、StylisticやDelfonicsといった70年代の古典的ビッグネームから始まって、The RootsやCommonを始めとする21世紀の凄腕コンテンポラリー・ソウル軍団の黒味走った佇まいまでを纏めて喚起させる極太な潮流であるわけですが、Philadelphiaの出身者と言うと、どうしても思い起こさずにはいられないロックバンドが居ます。The Hootersです。
長い前置きが終わって本題かと思いきや、いきなり脇道に逸れますが、The Hootersの主要メンバーであるEric BazilianとRob Hymanの二人はCindi Lauperのファーストアルバムの製作に深く関わってます。有名なヒットソング"Time After Time"はCindy Lauper*1とRob Hymanの共作だったりするのは有名な話です。
で、このEricとRob。両名ともビシッと歌えます。本作"Out of Body"の1曲目と2曲目を聴けばそのことは十分に伝わると思います。
1曲目は「俺はお前のLovin'を1日のうち25時間必要としているんだぜ」という軽薄なロックンロール。フィドルやらアコーディオンやらマンドリンが一斉に鳴っていたり、サビは全員で大合唱だったりして、お前らはアイルランドのバンドか、とでも突っ込みたくなるようなごった煮感と爽快な疾走感が共存する名作です。この曲で聴けるヴォーカルは記憶が確かであればEricさんのはず。
一方、2曲目の"Boys Will Be Boys"はRobさんとCindi Lauperのデュエット。前述の通り、The Hootersの面々とは只ならぬ仲のCindiさんです。お呼ばれさん的雰囲気は微塵も感じられず、むしろ自分の家より寛いじゃってる感が否めません。この曲のレコーディング時のCindiさんは既に紛うことなきオバサンのはずですが、そのヴォーカルのオシャマな可愛らしさったら半端じゃないです。詐欺的ですらあります。
というわけで、序盤で何も考えずに前置きとしてPhiladelphiaがどうのうこうのと語ってしまいかなり長くなってしまった上に、この The Hootersというバンドの何処がPhiladelphia的なのかは今になって考えても全く見当付きません。面目ない。"In My Great Big American Car”と歌う4曲目に代表されるように、エスニシティやローカリティなんざクソ食らえ的な香りのする古きよきアメリカンバンド*2の一つであることは確かだと思います。
で、結局Philadelphiaって日本で言うと何処?誰か教えてください。
- アーティスト: Hooters
- 出版社/メーカー: Mca
- 発売日: 1993/05/11
- メディア: CD
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