Get A Grip(Aerosmith)

ヒッピー風の外国人の一群と、やむを得ずヒッピー風なオジサンの一群と、オジサン達がばら撒いた柿ピーを一心不乱についばむドバトの一群に囲まれて、中学校からの旧友イノウエ君と語らう。そんな不思議な週末の夕べの過ごし方。

場所は高田馬場を流れる神田川の河岸。

am/pmで買っては飲み、また買っては飲みを繰り返していたサッポロ黒ラベル500ml缶の酔いも手伝って話題は尽きない。

そんな二人の不毛な語らいは必然的にプリミティブな方向に漂い、筆者が中学生の時分に発した数々の暴言・侮辱的発言について特に印象的なものを彼が回想するという、目覚しく剥き出しなお題と図らずも対峙することと相成りました。


「あのときのBon Joviバッシングには傷ついた・・」


と素直に感情を吐露するイノウエ君。


「その節はすまなかった」


と反省する筆者。

そんな会話を繰り返す我々からは、やはり悪質なオーラが発せられていたようです。柿ピーを啄ばみ続けるドバト達もそんな二人からは心なしか距離を置き始めた頃でした。


「そう言えば、あの時も酷かった」


とイノウエ君。なんでも、当時のAerosmithの新作"Get a Grip"に一発で惚れこみ興奮している彼に僕は、


「"Rocks"も"Toys in the Attick"も聴いたことないお前がAerosmithを語るな」


と言い放ったそうです。気の置けない朋友イノウエ君に対してこその物言いにしても、今の自分からすると絶縁必至の嫌な奴。「伊藤政則」臭の芳しい症状から察するに、"Buurn!!"の読み過ぎ辺りが原因かとも思われますが、さぞかし周囲の皆さんに嫌な思いをさせていたのでしょう。イノウエくん、今日まで友達でいてくれて有難う。これからもよろしく。


今となれば、むしろ伊藤政則がなんと言おうとAerosmith史上最高傑作かも知れんとすら思える"Get a Grip"。もはや金太郎飴とでも言えるレベルで何処を切り取ってもアメリカンロックの豊かな滋味溢れる会心作です。

強いて個人的ハイライトとも言える瞬間を切り取るのであれば、佳作"Line Up"でギターソロ直前に"Come on Joe!"と、作曲者Lenny Kravitzがソウルフルな合の手をカマす、あの瞬間でしょうか。あの頃はあんたもカッコよかったよLenny。


今になって思い出すのがラストトラックの激渋インスト"Boogie Man"。そんな"Boogie Man"をカセットテープのAB両面にひたすら連綿と録音していつも聞いていた山岸君(高校の同級生)のことを思い出します。

いくら"Rocks"が好きでも、"Toys in the Attick"が好きでも、君の"Boogie Man"への想いの深さには敵わないことは、当時から薄々分っていました。僕も貴方みたいなカッコいい高校生でありたかったです。


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