Bowie At The Beeb(David Bowie)
David Bowieのキャリアについては、安直にサムアップしてしまえば"Ziggy Stardust"〜"Hero"、言い方を代えると「ビンビンのグラムアイコンだった頃」〜「薄暗いベルリンでBrian Enoとつるんでいた頃」が全盛期とする向きがやはり一般的なのではないでしょうか。僕はつい最近までそう信じて疑いませんでした。
Bowieも人間であると同時にやはり根っからのミュージシャンなわけで、1980年代から現在に至るまで様々な作品を世に問うてきたわけですが、それらについては、程度の差こそあれ半ば「余生」扱いされてきた感がありますし、調子に乗って「Bowieはもう死んだ」などとのたまう輩もおりました*1。
そんなところで本作の出番。BBCでのライブテイクを集めたもので、モノの種類としてはよくある程度のものです。それが実は「目からウロコ」の逸品。
本作は3枚組でDisk1、Disk2は70年代のライヴ演奏です。フォークギター1本での演奏からMick Ronsonのレスポールカスタムの音まで、皆が大好きなBowieの曲のライブ演奏は一通り堪能できます。
但し、油断することなかれ。白眉は3枚目。録音は2000年です。
はっきり言って1枚目、2枚目への興味が一気に吹っ飛びます。しかもセットリストの大半が、自分で勝手に「暗黒時代」に仕立てあげていた80年代の作品からの選曲で構成されているのですから真に勝手ながら大いに衝撃を受けました。これだけ曲と演奏が良いと体が反応するもので、ヘタな予備知識や思い込みや偏見が幅を利かせる余地はない、ということが現実として良く飲み込めます。
90年代初頭に宮沢りえがカバーしているのを聴いて嘲笑した"Fame"。CMで流れているのを聴いて嘲笑した"Let's Dance"。どちらも本作で聴くと感服しちゃったりもするのですから、リスナーの意見なんてモノは無責任なもんだとつくづく思います。
演奏を付けるミュージシャン達の実力もまた凄いんでしょうし、彼等を選んだBowieもまた凄いということでしょう*2。
グラムの盟友Marc Bolanはかつて「21世紀少年の玩具になりたい」と唄いました。その後Bolanは事故であっさり死んで確かに21世紀少年の玩具になってるかもしれませんが、かつて「僕等は一日だけはヒーローになれる」と唄った20世紀中年のBowieは実は21世紀になっても引き続きヒーローだったのだ、とウマい*3ことの1つでも言ってみたくなる誘惑に抗し難い気持ちにさせる本作です。
1968-72-Bowie at the Beeb: Limited Edition
- アーティスト: David Bowie
- 出版社/メーカー: Virgin Records Us
- 発売日: 2000/09/26
- メディア: CD
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