Tais Toi(Francis Veber)

二人組の逃亡者。

追う警察。

追うヤクザ。

全く共通項のない二人だが、迫る追手を次々と煙に巻いていく。


そんな映画をどこかで観たことがありませんか?

そう。本作を1行で評するならば、


「あと1歩で『ミッドナイトラン』に成り損ねた映画」


とでも言うべきでしょうか。

かのマスターピースに心の底から心酔するワタクシとしてはこれ以上無い賛辞であるとお受取り頂いて結構です。


それもそのはず、本作を監督したのは『奇人たちの晩餐会』『メルシィ人生』といった怪作を夜に送り出してきたFrancis Veber。

若干(いや、かなり)安易な設定が散見されたり、オチのインパクト不足に不満は残りますが、この異常なまでのテンポの良さについては比類する映画は少ないと断言致します。


Veber監督も、もう73歳。

2003年に監督した本作以降、新作の報が聞かれません。

むしろ最後に素晴らしい作品を残してくれてメルシーボークーと感謝すべきかもしれません。*1


ルビー&カンタン [DVD]

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*1:そんな名監督の晩節を安直な邦題(『ルビー&カンタン』)で冒涜した奴は万死に値する("Tais Toi"という原題は仏語で「黙れ!」という意味。一度でも本作を鑑賞すればその意味はよく分かる)。せめて、「この隠れた名作を独り占めしたい」、「この名作が誰にも見つかってほしくない」という心情の余り、故意にそんな駄タイトルを付けたと思いたい。いや、そう思い込むことにした。