空洞です(ゆらゆら帝国)

このトレモロ*1の異常な存在感。下手するとトレモロONがデフォルトです。


このトレモロというエフェクトは使い方にセンスが激しく要求される代物でして、センスの無い私が弊バンドであるエロひじきで使おうものなら、即時にベースのかとぅ君が眉をひそめるわけですが、本作におけるトレモロの使いこなしっぷりは流石といえましょう。

本当のことを申さば、使いこなしっぷりと言うには使われ過ぎなわけですが、言ってしまえばそのこと自体が本作は全面的にセンスだけで出来ているということを如実に表しているのではないか、と思います*2


ギターの歪みとベースの圧力とドラムスの躍動感がロックミュージックの醍醐味だとするならば、それらを徹底的に去勢したのが本作と言えましょう。

どんな気分でこういう音楽集ができあがったのやら、実際のところは作った坂本さんに尋ねねば分かりませんが、もはやクリシェと成り下がった「醍醐味」への反動として彼らの音楽がこうなったであれば、現代人の退屈とはここまで病的なところまで来たか、という感慨の一つも覚えるというものです。本作が画期的なる一つの所以でありましょう。


さて、それにしても抑揚の無い本作。

リリース前から抑揚が無い、抑揚が無い、と騒がれていただけに、いざ聴くとなると先入観が捨てきれないのが人間の性。なかなかプレインな気持ちで鑑賞できないものですが、この抑揚の無さは、仕事をしながら聞くと驚くほど鮮明に理解できます。

本作を残して全ての音楽を手放せば、音楽が貴方の仕事を邪魔することはその後金輪際ございません。恐らく。


空洞です

空洞です

*1:イタリア語で振動やら揺らぎのことを意味するらしいが、要するに音に対して与えられるそういった類の効果のこと。トレモロと言えば思い出す名門国産ブランドBOSSの小粋な緑色の箱を通して鳴るエレクトリックギターの音像得も言われぬ魅力を湛えている。故Link Wray大先生の大名曲"Rumble"が終盤ザワザワと暴れだすのもこのトレモロ効果による。ちなみに筆者が心底愛するWurlitzerにはデフォルトでこの機能が付いている。いわずもがな。

*2:センスと言えば、本作、"Hollow Me"という英題も素晴らしい。簡単に一言で言うのも何だがセンスがいい。