Wedding Banquet(李安)

メリケン国のカウボーイさん達の「禁断の愛」を描いているという最新作"Brokeback Mountain"(個人的には未見)が妙に評判の良かった台湾のアン・リー(李安またはAng Lee)監督。

同作品は、私の知る限り、アン・リー監督の「禁断の愛」モノとしては二作品目です。本作はその一本目に当たります。


アメリカで暮らす台湾人ビジネスマンと台湾で暮らす両親の間でくすぶり出した「結婚問題」という火種が、たちまち周囲(ゲイのボーイフレンド、間借り人のアーティスト女性、Taiwaneseコミュニティ等等)に延焼。果たして焼け野原にゃ何が残るのか、というのが本作の大筋です。

「家族」という素材を「コンサバ&リベラル」や「男&女」という二項対立で捉えてみました、という濃厚なテーマの割には、ベタなストーリー展開とちょっとした仕掛けが嫌味なく面白い、ホッコリとした人間味があっさりと楽しめる映画になっています。

意地悪な見方をすれば、ご都合主義の生温っちい内容なのかもしれませんが、この映画を見た当時の自分は「色んな国があって、色んな人がいて、色んな文化があって、とりあえずワンダフルだよねぇ!」ってな具合の、某大手新聞のようなお気楽インターナショナル・フィーリングを持ったガキだったので、実にちょうど良い湯加減でした。


ちょいと前に本作を観直す機会があったのですが、その際にとても印象的だったのは、登場人物の中の「何も知らない父」と「その妻(要するに母)」が自分の祖父、祖母を強く彷彿とさせたことです。そんな風に感情を移入してしまうと、台湾に帰る二人の背中を見送るラストカットでは得も言われぬ気持ちになること必定です。


冒頭で自分で焚き付けておきながら矛盾することを申しますが、実のところ本作から「禁断」が全然香らないのは、本題である「家族」を際立たせるには「禁断」の部分は薄められざるを得なかったという、考えても見れば当然なことがあるように思えます。

アン・リー監督、そこのところの落とし前を"Brokeback Mt."で付けようとしたのか、とも思うのですが、リーつながりで言えば、マイク・リー監督なら、むしろそこら辺でどっちかを薄めるなんてことは一切せずに、原液合わせて攪拌したまま注いで召し上がれ、みたいな映画を作りそうな気がします。