Midnight Run(Martin Brest)

生きとし生ける総ての人間を信じたい、そんな気持ちにしてくれる究極の人間賛歌です。こんな映画があるだけでこの世の中は素晴らしいとさえ思えます。


…とまぁ、のっけから目の据わった面倒な人の匂いをショットガン的に発射してしまいましたが、冷静になって考えてみましても、メインからサブまで、印象的なキャラクター達がともかく林立状態になっている傑作です。

それぞれのキャラクターが絶妙にデフォルメされつつも繊細に描写されており、正に全員が愛すべき存在として輝いております*1

そして、その余りにも爽やかなエンディングに、アメリカ映画特有の無理*2も総て笑って許せるはずです。


…とまぁ、この映画に関しては語っても語っても語り足りないことが既におわかり頂けるかと思いますが、どれだけ書き立てたところで既に暑苦しいのがさらに暑苦しくなっていくことも理解はしております。本文をお読み頂いている方の中には本作未見の方も居られるでしょうから*3、個別の場面、台詞、表情についてはとりたてて言及しないことに致しましょう。。

ともかく、鍵穴に針金を差し込むJackに向かってBoucheが発砲するショットガンの銃声から始まって、LAの空港から歩いて遠ざかるJackの背中に絶妙のタイミングでエンディングテーマが被さるその瞬間までをもう何度見直したかも分からないこの映画に対して自分は多くを負い、感謝の気持ちが絶えることがありません。そこのところを簡潔に面白く表現する能力を自分が持ち合わせていないことが残念でしょうがありませんが、もし他人が私を語るときがあるならば「"Midnight Run"が好きな人」で済まされても悪い気は全くしません。むしろ嬉しい。


内心は認めたくなかったのですが、結局はベタで、浪花節的で、センチメンタルな映画が好きだ、ということを自分でも認めざるを得ないことに薄々感づいてきた今日この頃です。



追記:思えば、本作のオリジナル脚本*4を入手したことが伏線だったのでしょうか、つい先日、本作のサウンドトラックを遂に入手いたしました。探し続けること苦節10数年、邂逅とは正にこのことでございました。その瞬間に私の口を衝いて出た言葉は、恥ずかしながら「オーマイガァッ」でした(ホントに)。しかも価格は100円。ディスクユニオン関内店の凋落から余りにも多くの月日が経ってしまいましたが、白髪の紳士が出迎えてくれるレコード店・MASH RECORDを「新・何かが起きる店」として万を持して推挙致します。それにしても、神楽坂の頂点から向こう側(早稲田側)には、100円ビールの竹ちゃんと言い、超速超盛超美味チャーハンのりゅうほうと言い、今回のMASH RECORDと言い、名も知られぬままにのハイクオリティなサービスを提供し続ける経営体が多く観られます。ハイエンド且つセレブリティ的な手前側(九段側)に勝るとも劣らない素晴らしい地域です。


*1:男臭過多ではあるが。

*2:殴るとすぐ気絶するのはその一例。まるで『Aチーム』のコングのように直ぐに気絶するのは都合が良過ぎるという批判は甘んじて受けざるを得ない。

*3:私はあなたが可哀想だと思うが、同時に死ぬほど羨ましくもある。

*4:まだ全部読んでないので詳しくは触れないが、マニア垂涎のネタであることは確か。そんなマニアが居るのかは疑問だが。