ハドソンベストコレクション VOL.1 ボンバーマンコレクション

この『ボンバーマン』というゲームがきっかけで気が狂いかけたことがあります。


あれは主に高校生の頃だったか、溜まり場となっていた友人宅で当時既にロートル扱いされていたPCエンジンというハードウェアでこのゲームをプレイしていました。

PCエンジンを使っていた理由は、複数のコントローラを接続するタップ(ハブのようなもの)があったからで、そいつを利用して友人の兄も入れた5人で「殺し合う」のがいつもの楽しみ方でした。徐々にスピードが上がり、火力も上がるにつれて、決まって大盛り上がりだったものです。


不思議だったのは、稀に、全員が全員、気でも狂ったのではないかと思うようなレベルまでヴォルテージが上がる現象が観られたことです。まるで集団ヒステリーの様相で、笑い過ぎた結果、翌朝は全身打撲かというぐらいのレベルの筋肉痛になっていました。

一体全体どういう条件が満たされるとあの現象が起きていたのか…。完全にシラフで体外から何らかの物質を摂取したわけでなかったのですが…。脳内で自己生成した麻薬成分か何かにヤラれていたとしか思えないあの浮遊感をかなりリアルに記憶していますが、アルコールで酩酊する感覚などは足元にも及ばない強烈なものでした。


一度そんな状態に陥ってしまうと、感覚は鋭くなるばかりな一方、身体能力の微調整が効かなくなるということも分かりました。ちょっとしたことでも過剰に筋肉が反応してしまうのです。

5人で「殺し合った」後、過去最高にヴォルテージの上がっていた自分は、家に帰る時、何故か全力疾走でした*1

団地の階段を文字通り飛ぶように駆け上がってドアを開けて家に入ると、家族は皆寝静まっている。そのとき、その日について一番鮮烈に覚えていることが起きることになります。


廊下でちょっとしたゴミを見つけました。 それはほんとにちょっとした綿ボコリでした。いまでも鮮明に思い出せますが、そのときの自分は、その綿ボコリを避けようとしてと、大きく飛び上がってしまい、壁(ドアの継ぎ目)に脳天を思いっきり強打したのです*2

ただの綿ボコリを文字通り飛び越えようとしている時点でどこかがおかしいわけですが、何せ筋力の制御が効いていないので、まるでスーパーマリオのように本当に「飛んで」しまうのです。舌を噛み切らなくて本当に良かったと思えるほどに無防備に脳天を強打して、頭を抱えてしばらく悶絶するのですが、そんな間も、「うふふ…飛んじゃった…」みたいな声がブツリブツリと聴こえてくるような気がして、ニヘラニヘラ笑っておりました。

あの時、家族の誰かに通報されていたら今の私の人生は変わっていたと思います。


最近、多数の女性を引っ張り込んでヒモ生活を送っていたという男が逮捕されました。あの男が被害者にかけていたという催眠術。どんな理屈なのかは知りませんが、あながちそんな話が信じられないでもないのは、他ならぬ自分がこのゲームで体験したインナートリップと無縁ではありません。


…とまぁ、怪談みたいなテイストになってしまいましたが、全部本当の話です。あ、でもこのゲームが原因というのは根拠が全く無い話で、恐らくこのゲームを切っ掛けにして起こった集団催眠みたいなものだったのでしょう。くわばらくわばら。


*1:真っ暗で物音もしないような深夜だったので、耳の脇を風がビュンビュン鳴っていた。物凄く寒い夜だったこともあってか、湧き出るような涙が止まらなかったのをよく覚えている

*2:自ら激しく頭突きしたという方が近かった。