Plates & Dishes: The Food And Faces Of The Roadside Diner(Stephen Schacher)
アメリカに行ったことがありません。別段行きたいとも思いませんが、たった一つ気になるものがあって、それは恐らくアメリカに行かないと体験できません。
Dinerってやつです。 とりわけド田舎のそれ。
「この町で生まれて、この町で育って、この町で恋をして、この町で失恋して、この町で働いて、この町で歳をとって、そうやって死ぬまでこの町から出られないんだから、優しくなんかしないでよ!」
…と吐き捨てる薄いピンクの制服を着た化粧の濃い彼女がウェイトレスをしている場所。それがDiner。
映画"Butterfly Effect"で、落ちぶれたガールフレンドが働いていたあの場所。
映画"Pulp Fiction"で、Samuel L JacksonがTim Rossに説教を垂れたあの場所。
映画"Sideway"で、Paul Giamattiが独りショボくれてメシを食ってたあの場所。
映画"Million Dollar Baby"で、Hillary Swankが客が残した肉を隠れて包んでいたあの場所。
映画"Midnight Run"で、Jackが「俺にはタバコが必要なんだ」と宣いつつコーヒーにグラニュー糖を大量投入している脇で、手錠をはめられたままのDukeがチョリソー&エッグを食べ損ねてティーバッグを上下に揺らしていた、あの場所。
憧憬と妄想とをマゼコゼにしているだけなので、実際のところはどうなのかについてはサッパリ知らないことを棚にあげますが、こればっかりは日本にある紛い物には私の食指はピクリとも動きません。
そんな私のための写真集と言っても過言ではない本作*1。ページをめくると緊張気味で格好つけている方から満面の笑みで中指を立てている方までおられて、実際のウェイトレスさんたちの表情や服装がリアルに伝わる一級資料です。実際の料理の面構えもやはり日本では味わうことのできない硬派のものだったので感激いたしました。
ましてや、メニューの名前と価格までが載っているのには拍手。いやはや分かってらっしゃいます。
なお、ワタクシ、あくまでもコンテンポラリーな存在としてのDinerに興味があるのであって懐古的な嗜好は全くございません。"Lipstick on Your Collar"や所ジョージの雑誌("Lightning")や"American Graffiti"や福生やルートビアに夢中になっているわけでは断じてないので悪しからず*2。
Plates and Dishes: The Food and Faces of the Roadside Diner
- 作者: Stephen Schacher
- 出版社/メーカー: Princeton Architectural Press
- 発売日: 2005/05/12
- メディア: ペーパーバック
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