Pretzel Logic(Steely Dan)

「鉄壁」とか「完全」とか「洗練」とか「極み」とか、何かと厳ついイメージで修飾されていることの多いSteely Danです。そんな謳い文句を鵜呑みにして"Gaucho"だとか"Aja"とかから入門する人が多いようです。私もそうでした。

その結果、ガッカリ、とか、何が良いのかサッパリ分からん、という印象を覚えるリスクは少なからずあると思います。

評判やブランドや知識を先行させて音楽を聴いてカッコイイと思い込んでいるうちに自己暗示が効いてホントに好きになっちゃう、ってことも無きにしもあらずではあります。しかしながら、自分自身、実際に"Aja"を買ったときは、聴いてはみたものの分かった振りをするのが精一杯で、一生懸命に「これは名作」って自己暗示をかけていることに内心は気づいてしまっていたわけです。


でも、そんなこんなで彼らの音楽に見切りを付けるのも勿体ないことです。もうひと踏ん張りして、もう少々昔のアルバムを聴いてみることをお勧めします。


そういう意味では彼らの最初のアルバムの"Can't Buy a Thrill"をお勧めするのが筋ってもんでしょうが、個人的にお勧めしたいのは本作"Pretzel Logic"です。曲のとっつき易さと演奏の凄みが丁度いい塩梅だと思うからです。

実際にヒットしたシングルは1曲目の"Rikki Don't Lose That Number"だったようですが、むしろ4曲目の"Barrytown"という歌が個人的にはグッと来ます。『もしもピアノが弾けたなら』ではありませんが、こんな曲演奏できたらなぁと素直に思わせるだけのPOPさがあります*1

そこまでPOPでありながらにして、素直さの欠片も無いあの陰険な歌詞。


「あなたを敵だとは思ってないけど友達にはなりたくない


…ですって。いっそのこと「敵だ」って言って頂きたい。


POPに毒を吐くその様を観て後光差し込む神々しさすら感じてしまう私のようなキンキー天邪鬼さんたちには特にお勧めいたします。本作を聴いても退屈だと思った方は騙されたと思って"Can't Buy a Thrill"を聴いてみてください…ってそこまでする筋合いでもないか。


Pretzel Logic

Pretzel Logic

*1:Ben Folds Fiveがカヴァーしてたりもする