Joshua Tree(U2)

今回はDVDです。これまでは音楽作品だけをレビュー対象にしていところをこちらにまで手を広げ始めるとキリがないので止めとこうと思いましたが、余りに素晴らしかったので。

本作、超有名バンドU2の超有名アルバム"Joshua Tree"の製作ドキュメンタリーです。超有名とは言えど、知っている人が見ないと面白くもない作品でありましょう。ただし、"Joshua Tree"を聞き込んだ人間が観ると泣けるほど琴線に触れる可能性大です。


あの"With or Without You"のラストを〆るギターのフレーズ。ギタリストThe Edge本人にとっては、あのDコードに絡めた極々シンプルなフレーズがこのアルバムの中で一番のお気に入りのフレーズとのこと。

もう、そのことを知れただけでも自分としては十分。「あんたのギターが好きなのはそういうところだし、そういうフレーズが良いことが十分に分かっててやってるところだよ・・・そうこなっくちゃ」と膝を打ち、もう生中の一杯や二杯奢って差し上げたくなる。しかも流れる曲に合わせてその場でフレーズを弾き始める。それもかなり無防備に嬉々として照れくさそうに。


バンドのチリ公演で、このバンドのVocal兼PoliticianであるBonoが、ピノチェトに子供たちを殺された母親たちをステージに上げ、"Mothers of disappeared"を歌うその光景が画面に映った瞬間に心の深い深い奥底で「あほらし」と思っていたりする自分が居ます。それでもこのバンドが好きである、ということが、矛盾しながらも成立している秘訣が、根本的なギター馬鹿The Edgeの存在にある、ということが改めて分かった瞬間でした。

誰が何と言おうと、彼の風貌とキャラクターが今後どれだけこれ以上怪しく変化しようとも、このギタリストの虜であり続けるはずだと勝手に、実に強固に、確信した瞬間でありました。


本作にはバンドのメンバーに加えて、本作にまつわる全仕事にかかわった重要人物たちも勢揃いしてます。Brian EnoDaniel Lanois、Steve Lillywhite、Floodといったプロデューサー、エンジニア達。ついでにPaul McGuinness(マネージャー。その風貌は予想を遥かに越えるほどにIrish)やらAnton Corbijn(写真家)も出てきます。最後の二人に関しては、初めて御顔を拝見しました。

本作に関してはプロデューサーの二人の仕事の存在感が非常に大きいことが頭でもハートでも理解できることが本作が画期的な一つの理由だと言えましょう(どちらか片方ではないことが重要)。中高生の頃、プロデューサーとはどんな仕事をしている人なのか皆目見当もつかず、バンドの力を借りて威を振りまく嫌な奴ぐらいにしか考えていませんでした。あの頃の自分に本作を見せてやりたい。特にDaniel Lanoisの魅力にまだ触れていない方々は、もったいないオバケに要注意。彼自身の名義の音楽作品もまた素晴らしいです。


余談ですが、本作を観る前に、超有名バンドoasisの超有名デビュー作"Definitely Maybe"の製作ドキュメンタリーも観たのですが、彼らの喋る英語が殆ど聞き取れず打ちひしがれました。極東で英語を勉強して、多少悪いスラング使ってLadd気取っても、結局は本作でジェントルに語るセレブ達の会話ぐらいしか聞き取れないのが関の山ということでしょうか。Brian Enoの語りには、その洞察力(と聞き取り易さ)の深さに感服しました。


ヨシュアトゥリー [DVD]

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