In Color(Cheap Trick)

かつてKissやQueenAerosmithと並んで日本で人気を博したと言われるCheap Trick。ポップな音楽性の割には、先に挙げたバンドの中で一番毒性が高いと思われます。派手派手しいQueenやKissがああ見えて実は毒なんか殆んど含んでいないのが対照的です*1

本作を筆頭に初期作品のジャケットを観るとこのバンドの毒性が露骨に香っており笑えます。


如何せんグッドルッキングなRobin Zander(ヴォーカル)とTom Petersson(ベース)の二人は表ジャケットで巨大でセクシーなアメリカンバイクにクールに跨っております。

一方、外見はどう割り引いてもコメディアンなRick Nielsen(ギター)と野球なら十中八九キャッチャーをやらされるであろうBun E. Carlos(ドラム)の二人は裏ジャケでチョッパーハンドルの自転車にちんまりと跨っています。チャリンコですよ、チャリンコ。しかもそんな裏面の印刷だけは白黒。その差別たるや、徹底しております。


そんな彼らが本当に凄いところは、いまだもって「美&醜」の対比を剥き出しで押し出し続けているその生き様です。正にShow Must Go On。

加齢後の「永遠の美青年」Robin Zanderが、ノースリーブからくたびれた二の腕を曝け出し、高級ギター(Rickenbacker)をかき鳴らしつつ、時に苦しげに歌う脇で、嬉々として客席にレコードをばら撒きながらネックが4本も突き出たゲテモノギターをかき鳴らす、加齢後の「永遠の三枚目」Rick Nielsen。ドラムスのCarlosさんに至っては昔からデブだった上に、禿げてしまったがためにそのチョビ髭の威力も倍増。ビデオクリップでバスドラムに投影した自らの顔面がぐるぐると回転していても、体調不良でツアーから脱落しても、ともかく笑って許せてしまう始末です。


「花の命は短い」ではありませんが、二枚目の歳の取り方は難しく思えるのは一般的な意見だと思います。「どうして三枚目が皆から好かれるのか?誰からも嫉妬されないからよ。」と喝破したのは美輪明宏氏でしたが、言い換えれば、三枚目とは、ただもう「そう在る」ことさえ継続できれば他に何も期待されずに済む、ラストリゾートなのかもしれません。そんな三枚目の無自覚な躍動と二枚目の運命的な悲哀を、キャリア全体で皮肉を込めて表現しているCheap Trick。全く以って油断なりません。


In Color

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*1:Aerosmithは「毒」というより「クスリ」。